給湯器が凍結で壊れた？専門家が教える正しい対処法と再発防止の全知識

冬の朝、突然お湯が出なくなり、家族全員がパニックに…そんな絶望的な状況でも、どうか落ち着いてください。給湯器の凍結は、正しい手順で対処すればご家庭で解決できることがほとんどです。まず、リモコンをOFFにしてください。そして、絶対に電源プラグは抜かないでください。

• この記事でわかること
  1. パニックにならずに済む、安全で確実な凍結解除のステップ
  2. 一晩数十円の対策で数万円の修理費を節約する、賢い再発防止策
  3. 悪質業者を見抜き、信頼できる専門家を選ぶための具体的なチェックリスト

【緊急対応】給湯器が凍結！今すぐ家庭でできる安全な対処法

👉 このパートをまとめると！
給湯器が凍結したらリモコンをOFFにし、自然解凍を待つのが最善策。急ぐ場合は給水管をぬるま湯で温めます。熱湯と電源プラグを抜くのは厳禁です。

寒い中、お湯が出ず大変お困りのことと存じます。まずは慌てず、これからお伝えする手順に従って、安全に対処しましょう。

ステップ1：状況確認と安全確保

最初に、凍結が原因かを確認します。お湯の蛇口だけでなく、水の蛇口からも水が出ない場合、家全体の水道管が凍結している可能性があります。水は出るがお湯だけが出ない場合は、給湯器周りの凍結が濃厚です。

状況が確認できたら、まず給湯器のリモコンの運転スイッチを「切（OFF）」にしてください。これは、解凍された際に意図せず給湯器が燃焼を始めるのを防ぐためです。

そして、最も重要なことですが、給湯器本体の電源プラグは絶対に抜かないでください。
多くの給湯器には、内部の配管を凍結から守るための「凍結防止ヒーター」が内蔵されています。電源プラグを抜いてしまうと、このヒーターまで停止してしまい、かえって凍結を悪化させ、故障に繋がる恐れがあるのです。

このヒーターは、給湯器がコンセントに接続されている限り、外気温の低下を感知して自動で配管を温め、凍結を防いでくれる重要な機能です。

ステップ2：基本の対処法は「自然解凍」

専門家として最も推奨する方法は、意外かもしれませんが「待つ」ことです。

日中になり外気温が上昇すれば、凍結した配管は自然に解凍されます。焦って不適切な対応をとり、事態を悪化させるリスクを避けるための、最も安全で確実な方法です。

ステップ3：どうしても急ぐ場合の応急処置

「どうしても今すぐお湯を使いたい」という場合は、応急処置として以下の方法を試してください。

給湯器本体の下に接続されている配管の中で、特に凍結しやすい「給水元栓」やその周辺にタオルを巻きつけます。その上から、人肌程度のぬるま湯（30～40℃）を、ゆっくりとかけてください。

この際、コンセントや電気系統の部品に絶対にお湯がかからないよう、細心の注意が必要です。

【絶対NG】これをやると修理費が跳ね上がる危険な行為

パニック状態にあると、ついやってしまいがちな危険な行為があります。これを行うと、単なる凍結が、高額な修理費用を伴う大惨事に発展する可能性があります。

• 危険行為1：熱湯をかける（配管破裂のリスク）
  大手給湯器メーカーのリンナイ社などが一貫して警告するように、凍結した金属製の配管に熱湯をかけるのは絶対にやめてください。金属が急激に熱で膨張する「熱衝撃」により、配管やバルブに亀裂が入ったり、破裂したりする危険性が非常に高いのです。
• 危険行為2：電源プラグを抜く（凍結防止機能の停止）
  前述の通り、これは給湯器を守る最後の砦である凍結防止ヒーターを無効化する行為です。善意からくる行動が、致命的な故障を引き起こす原因となります。

【再発防止】二度と凍結させないための賢い予防策3選

👉 このパートをまとめると！
給湯器の自動凍結防止機能を活かすため電源は抜かない。浴槽に残り湯を張り、寒波の夜は鉛筆の芯の太さで水を流し続ける「通水」が効果的です。

一度この大変な経験をしたら、二度と繰り返したくないと誰もが思うはずです。幸い、ご家庭でできる効果的な予防策が3つあります。

対策1：給湯器の「自動凍結防止機能」を最大限に活用する

最近の給湯器には、外気温が一定以下になると自動で作動する、2種類の凍結防止機能が標準装備されています。

1. 凍結予防ヒーター: 給湯器内部の配管を電気ヒーターで直接温め、凍結を防ぎます。
2. 自動ポンプ運転: 追いだき機能付きの機種で、浴槽の残り湯をポンプで循環させ、配管の凍結を防ぎます。

これらの機能を有効にするには、以下の2つの条件を必ず守ってください。

• 電源プラグは年間を通して抜かない
• 追いだき機能付きの場合、浴槽の循環口より5cm以上残り湯を張っておく

対策2：最強寒波の夜に行う「通水」（出しっぱなし）

テレビなどで「数年に一度の寒波」といった予報が出た夜は、自動機能だけでは不十分な場合があります。

その際に最も効果的なのが、お湯側の蛇口から1分間に約400ミリリットル（鉛筆の芯や割り箸一本程度の太さ）の水を少量流し続ける「通水」です。流れている水は凍りにくいため、給湯器だけでなく、屋外の配管全体の凍結防止に絶大な効果があります。

「水道代がもったいない」と感じるかもしれませんが、一晩の水道代は数十円程度です。一方で、凍結による修理・交換費用は数万円から数十万円に及ぶこともあります。これは、最もコストパフォーマンスに優れた投資と言えるでしょう。

対策3：長期不在時に行う「水抜き」

冬の季節に旅行などで長期間家を空ける場合は、給湯器と配管内の水を完全に抜く「水抜き」が最も確実な対策です。具体的な手順は機種によって異なるため、給湯器の取扱説明書をご確認ください。

もし本当に壊れたら？修理と交換の判断基準と費用相場

👉 このパートをまとめると！
給湯器の寿命は約10年。使用年数と症状で修理か交換かを判断します。水漏れがある場合はすぐ専門業者に連絡し、悪質な点検商法には注意が必要です。

解凍後も給湯器が動かない、あるいは配管から水が漏れている場合は、残念ながら故障している可能性が高いです。

「修理」か「交換」か？判断の目安は使用年数

給湯器の設計上の標準使用期間は、一般的に約10年とされています。

• 使用年数10年未満の場合:
  故障箇所の部品交換など、「修理」で対応できる可能性が高いです。
• 使用年数10年以上の場合:
  たとえ修理しても、他の部品が次々と寿命を迎え、結果的に修理費用がかさむことがあります。
  また、古い機種は熱効率が悪く、ガス代も高くなりがちです。
  そのため、長期的な視点で見れば、最新の高効率給湯器への「交換」が賢い選択となることが多いです。

症状別の修理・交換費用の目安

費用はあくまで目安ですが、予期せぬ出費に備えるためにも相場を知っておくことが重要です。

• 水漏れ、配管の破裂: 約2万円～5万円（修理）
• 本体の故障（電装基盤など）: 約8万円～30万円以上（交換）

信頼できる業者を選ぶための5つのチェックリスト

給湯器の緊急故障は、消費者の不安に付け込む悪質業者が最も狙いやすい状況の一つです。国民生活センターも、特に高齢者を狙った点検商法について繰り返し注意を呼びかけています。高額な請求や手抜き工事の被害に遭わないために、以下の5点を必ず確認してください。

1. 有資格者が在籍しているか確認する
   給湯器の設置・修理には「ガス機器設置スペシャリスト（GSS）」などの専門資格が必要です。
2. 詳細な見積書を要求する
   口頭での金額提示は絶対に受け入れず、本体価格、工事費、部品代などが明記された書面の見積書を必ずもらいましょう。
3. 必ず2～3社から相見積もりを取る
   緊急時であっても、これが不当な高額請求を防ぐ最も効果的な手段です。
4. 工事保証の有無を確認する
   製品自体のメーカー保証とは別に、施工に対する「工事保証」を提供しているかを確認します。
5. 契約を急がせる業者は断る
   「今日だけこの価格です」「このままだと危険です」などと不安を煽り契約を急がせるのは、悪質業者の典型的な手口です。

なぜ今、給湯器の凍結対策が重要なのか？これは家庭だけの問題ではない

👉 このパートをまとめると！
近年の異常気象で給湯器の凍結リスクは増大しています。一件の配管破裂が地域の断水を引き起こす可能性もあり、個人の予防が社会インフラを守ります。

「たかが給湯器の凍結」と軽く考えてはいけません。実は、この問題は私たちの生活の根幹を揺るがす、より大きな問題と繋がっています。

異常気象で頻発する「想定外」の寒波

近年、気候変動の影響で、かつてない規模の寒波が日本列島を襲うことが増えています。

日本水道協会の調査によれば、記憶に新しい2023年1月の大寒波では、全国で実に28,000件以上の給水管破裂が報告されました。
これはもはや個人の不運ではなく、社会全体で備えるべき災害レベルのリスクと言えるでしょう。

あなたの家の水漏れが、地域の断水を引き起こす

数万件規模で発生する配管破裂による水漏れは、地域全体の水道水の供給量を急激に減少させ、水圧の低下や大規模な断水を引き起こす原因となります。

つまり、ご家庭での凍結予防は、自らの生活を守るだけでなく、地域社会全体の水道インフラ機能を維持するための、市民の重要な責務でもあるのです。

【未来の安心】もう凍結に怯えない。IoT給湯器という賢い選択

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最新のIoT給湯器は、故障の兆候をAIが検知しスマホに通知する「予知保全」が可能。突然お湯が使えなくなるトラブルを過去のものにします。

これまでの対策は、あくまで「問題が起きた後」や「問題が起きないようにする」ためのものでした。しかし技術の進化は、その常識を覆そうとしています。

壊れたら電話する時代から、「壊れる前に知らせてくれる」時代へ

最新の「IoT給湯器」は、インターネットに常時接続され、内部の各種センサーが稼働状況を24時間監視しています。

そして、振動や圧力の微細な変化といった故障の兆候をAIが解析し、本格的に壊れる前に「そろそろメンテナンスが必要です」と私たちのスマートフォンに通知してくれるのです。
これは「予知保全」と呼ばれる技術で、突然お湯が使えなくなるという最悪の事態を、過去のものにしてくれます。

エネルギーを最適化するHEMSとの連携

さらに、高効率給湯器「エコジョーズ」などをHEMS（ホームエネルギーマネジメントシステム）と連携させることで、家庭のエネルギー消費を最適化できます。

経済産業省のデータによると、家庭でのエネルギー消費のうち、給湯が占める割合は28.7%と最大です。
給湯器の効率化は、家計の光熱費を削減する上で最も効果的な手段なのです。

給湯器の凍結に関するよくある質問（FAQ）

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給湯器の凍結による破損は、火災保険の「破損・汚損」特約で補償される場合があります。賃貸物件の場合は、まず管理会社や大家さんに連絡してください。

Q. 凍結による修理・交換費用は火災保険で補償されますか？

A. ご契約の火災保険に「破損・汚損損害等」の補償特約が付帯していれば、水道管自体の破裂による損害が補償対象となる可能性があります。また、破裂による水濡れ被害は「水濡れ」補償の対象となることが多いです。ただし、経年劣化と判断された場合は対象外となるため、保険会社にご確認ください。

Q. 賃貸マンション・アパートで凍結した場合、誰が費用を負担しますか？

A. まずは、すぐに管理会社や大家さんに連絡してください。通常の使用方法（凍結予防策を怠っていないなど）で発生した故障であれば、貸主側の負担で修理・交換となるのが一般的です。ただし、入居者の過失（長期間不在時に電源プラグを抜いていたなど）が原因の場合は、費用を請求される可能性もあります。

Q. エラーコード「〇〇」が表示されていますが、凍結が原因ですか？

A. 凍結によって給湯器内部の水が流れなくなり、安全装置が作動してエラーコードが表示されるケースは非常に多いです。まずは本記事で紹介した対処法を試し、解凍後にエラーが消えるかを確認してください。それでもエラーが消えない場合は、他の原因も考えられるため、専門業者に点検を依頼しましょう。

まとめ：給湯器の凍結は「備え」がすべて

給湯器の凍結という突然のトラブルも、正しい知識があれば冷静に対処し、そして未然に防ぐことができます。最後に、この記事の要点を再確認しましょう。

• 緊急時にやるべきこと： リモコンOFF、電源は抜かず自然解凍を待つ。
• 最高の予防策： 電源ON＋残り湯＋寒波時の「通水」。
• 万が一の故障時： 10年を目安に交換を検討し、必ず相見積もりを取る。
• 未来のために： 次の交換は、故障を予知するIoT給湯器も視野に入れる。

この記事が、あなたの冬の安心な暮らしの一助となれば幸いです。

参考文献

• 令和５年１月における給水装置等の凍結被害に係るアンケート調査結果 – 日本水道協会, 2023年3月
• ツナガルde給湯器でできること – 大阪ガス, 2025年8月22日閲覧
• ガス温水機器の現状について – 経済産業省, 2024年1月25日