賃貸のトイレ修理代は誰が払う?「過失」と「老朽化」の境界線と管理会社への伝え方

水のトラブル

賃貸のトイレ修理代は誰が払う?「過失」と「老朽化」の境界線と管理会社への伝え方

今朝、突然トイレのレバーを回しても水が止まらなくなったり、タンクの中から聞いたこともない異音が響いたりして、パニックになっていませんか?

「すぐに直さないと困るけれど、修理代はいくらかかるんだろう?」「築10年以上も経っているし、自分の使い方が悪いと言われて高額な請求をされたらどうしよう……」と、スマホを片手に不安な気持ちでこの記事に辿り着いたのではないでしょうか。

結論から申し上げます。築10年を超えた物件で、普通に生活していて起きたトイレの故障であれば、修理費用を支払うべきなのはあなたではなく「大家さん(貸主)」です。

この記事では、管理会社で20年以上修繕の現場を見てきた私が、法律とガイドラインという「盾」を使って、あなたが1円も損をせずにトラブルを解決するための全手順を解説します。

この記事を書いた人
  • お助け隊長ケン

    かつての苦いトラブル経験を原点に、水回りやガラスの修理から害虫駆除まで、暮らしのあらゆるSOSを徹底調査。優良業者選びの専門家として、あなたが「最適な一手」を見つけるための羅針盤となる情報だけを、中立的な視点でお届けします。


賃貸のトイレ修理代は「大家負担」が原則!改正民法606条の威力

トイレが故障した際、まず知っておくべきなのは「法律上のルール」です。賃貸物件において、設備の修理義務がどちらにあるかは、あなたの主観や管理会社のさじ加減で決まるものではありません。

改正民法第606条と大家さんの義務の関係は非常に明確です。改正民法第606条では、「貸主(大家さん)は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と定められています。

つまり、あなたが毎月支払っている「家賃」には、トイレが正常に使える状態を維持してもらうための対価が含まれているのです。したがって、トイレが使えなくなった状態を放置することは、大家さん側が契約上の義務を果たしていないことになります。

2020年の民法改正により、改正民法第606条に基づく「貸主の修繕義務」はより強化されました。もし大家さんが正当な理由なく修理を拒んだ場合、入居者は「自分で修理してその費用を請求する」ことや「修理されない期間の家賃減額」を主張する権利も明文化されています。

「過失」か「老朽化」か?築10年超なら知っておきたい判断基準

管理会社に連絡した際、最も恐ろしいのが「それはお客様の使い方が原因(過失)ですので、費用は自己負担です」と言われることでしょう。しかし、ここで重要になるのが「経年劣化(老朽化)」と「通常損耗」という概念です。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によれば、建物や設備の価値は時間の経過とともに減少します。特にトイレの内部部品(パッキンやボールタップなど)の耐用年数は、一般的に10年〜15年とされています。

あなたが住んでいる物件が築10年〜15年程度であれば、トイレの部品はまさに「寿命(耐用年数)」を迎えている状態です。この場合、普通に使っていて壊れたのであれば、それは「老朽化」であり、あなたの責任ではありません。

では、どのようなケースが「過失」とみなされるのでしょうか。以下の比較表で確認してみましょう。

故障の原因・状況 負担の所在 判断の理由
内部パッキンの硬化・劣化 大家負担 経年劣化(寿命)による自然な故障
ボールタップの動作不良 大家負担 通常の使用に伴う摩耗(通常損耗)
異物(スマホ・おむつ等)の詰まり 入居者負担 明らかな不注意(過失)
長期間(数ヶ月〜数年単位)の掃除不足による尿石の固着 入居者負担 善管注意義務(借りたものを大切に扱う義務)の違反
タンク内に洗浄剤を置いて破損 入居者負担 不適切な使用方法による故障

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 築10年を超えているなら、まずは「寿命による故障」を前提に強気で交渉して問題ありません。

なぜなら、管理会社側も「10年以上経てばいつ壊れてもおかしくない」ことを百も承知だからです。多くの入居者が「自分のせいかも」と弱腰になるのを見て、管理会社が費用を押し付けようとするケースを私は何度も見てきました。しかし、国土交通省のガイドラインという客観的な基準を提示されると、彼らはそれ以上無理な請求ができなくなります。

管理会社に「過失」と言わせない!電話・メールの伝え方テンプレート

知識があっても、いざ管理会社に連絡するとなると緊張しますよね。そこで、私が現役時代に「これを言われたら、大家負担で通すしかないな」と感じた、**国土交通省のガイドラインと法律を味方につける交渉テンプレート**を用意しました。

ポイントは、感情的にならず「客観的な事実」と「法的根拠」をセットで伝えることです。

管理会社への連絡メール(または電話)テンプレート

件名: 【修繕依頼】〇〇マンション〇〇号室 トイレ故障の件

お世話になっております。入居者の[あなたの氏名]です。
本日、トイレの[具体的な症状:水が止まらない等]が発生いたしました。

つきましては、以下の通り修繕のご対応をお願いしたくご連絡差し上げました。

1. 現在の状況: [例:タンク内で水が流れ続けている音がする]
2. 物件の状況: 当物件は築[築年数]年が経過しており、前回の設備交換履歴も不明です。(※ご自身の物件の築年数に合わせて書き換えてください)
3. 負担区分について: 今回の不具合は、通常の使用範囲内で発生したものであり、耐用年数を超えたことによる経年劣化(老朽化)であると考えております。

国土交通省のガイドラインおよび改正民法第606条に基づき、貸主様のご負担にて早急な修理の手配をお願いできますでしょうか。

お忙しいところ恐縮ですが、生活に支障が出ているため、本日中に今後の流れについてご回答いただけますと幸いです。

このように、「築年数」と「ガイドライン・民法」という言葉を出すだけで、管理会社は「この入居者は知識があるから、不当な請求は通らない」と判断します。

これだけはNG!修理代を自己負担にしてしまう3つの失敗

最後に、良かれと思ってやったことが原因で、本来払わなくていいはずの修理代を自己負担することになってしまう「最悪のパターン」をお伝えします。

1. 管理会社に無断で、自分で水道業者を呼んでしまう

これが最も多い失敗です。ネットで見つけた業者に修理を頼み、後から管理会社に「領収書を送るから払ってほしい」と言っても、まず拒否されます。大家さん側には「提携している安い業者」や「火災保険の適用」などの都合があるため、勝手な行動は契約違反とみなされるリスクがあります。

2. 故障に気づいているのに放置する(善管注意義務違反)

「少し水が漏れているけれど、面倒だからいいか」と放置し、結果として床が腐ったり階下に漏水したりした場合、あなたは善管注意義務(借りたものを大切に扱う義務)に違反したとみなされます。数ヶ月〜数年単位の放置によって被害が拡大した場合は、本来のトイレ修理代だけでなく、高額な損害賠償を請求されることになります。

3. 詰まりの原因について嘘をつく

「実は子供がおもちゃを流してしまった」といった原因があるのに、「何もしていないのに壊れた」と嘘をつくのは厳禁です。修理に来るプロの業者は、原因を一目で見抜きます。嘘が発覚すると信頼関係が崩れ、その後の交渉が一切通用しなくなります。なお、掃除不足が過失とされるのも、数ヶ月〜数年単位で全く手入れをせず尿石を固着させたような極端なケースに限られますので、正直に状況を伝えることが大切です。

まとめ

トイレの故障は、生活の根幹を揺るがす一大事です。しかし、築10年以上の物件に住むあなたには、法律とガイドラインという強い味方がついています。

  1. 改正民法第606条により、大家さんには修繕の義務がある。
  2. 築年数が10年〜15年を超えていれば、内部部品の故障は「経年劣化」とみなされるのが妥当。
  3. 管理会社への連絡は、テンプレートを使って「法的根拠」を提示する。

まずは深呼吸をして、先ほどのテンプレートを画面に出しながら、管理会社へ連絡を入れてください。正当な権利を主張すれば、あなたは1円も払うことなく、元の快適な生活を取り戻せるはずです。

「賃貸住宅の設備(エアコン、給湯器、トイレ等)が故障した場合、その修理費用は原則として貸主が負担する。ただし、借主の故意・過失による場合はこの限りではない。」

出典: 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン – 国土交通省

参考文献

  • 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版) – 国土交通省
  • 民法(第606条:賃貸人による修繕等) – e-Gov法令検索
  • 賃貸住宅の入居・退去に係る留意点 – 独立行政法人国民生活センター

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