【慌てないで】水道代が急に高い！原因は？元水道局員が教える1分チェック法と鉄則

***

この記事の監修者

***

水道代が急に高くなった場合、その原因の多くはご家庭内の目に見えない場所での「水漏れ」です。しかし、ご安心ください。専門家でなくても、水道メーターの「パイロット」を確認するだけで、その可能性を1分でセルフチェックできます。

この記事では、元水道局員の専門家として、以下の3点を分かりやすく解説します。

1. ご自身でできる、水道代高騰の原因特定チェックリスト
2. ケース別の正しい対処法と、悪質業者を避けるための鉄則
3. なぜ全国で水道料金が値上がりするのか、という根本的な理由

まずは落ち着いて！水道代が急に高くなった主な4つの原因

👉 このパートをまとめると！
水道代が急に高くなる原因は主に4つ。最も多いのは「水漏れ」ですが、家族構成の変化や引っ越し、料金自体の値上げも考えられます。

突然、水道料金の請求額が倍になっていると、誰でも驚き、不安になりますよね。しかし、慌てる必要はありません。原因は、主に以下の4つのいずれかであることがほとんどです。

原因①：水漏れ（最も可能性が高い）

最も一般的で、かつ請求額への影響が大きい原因が「水漏れ」です。

蛇口からポタポタと水が垂れているような目に見えるものだけでなく、トイレのタンクの中や、壁・床下、地中に埋められた給水管など、普段は目につかない場所で静かに水が漏れ続けているケースが非常に多くあります。

原因②：使用状況の変化

ご自身では意識していなくても、ライフスタイルの変化によって水の使用量が自然と増えていることがあります。

例えば、「家族が増えた」「子供が夏休みで家にいる時間が増えた」「在宅勤務になり、日中のトイレ使用や洗い物が増えた」といった変化がなかったか、一度振り返ってみましょう。

原因③：引っ越しによる料金体系の違い

意外と見落としがちなのが、引っ越しによる影響です。水道料金は全国で一律ではなく、水源の状況やインフラの整備状況などによって、自治体ごとに料金体系が大きく異なります。

そのため、以前住んでいた地域と同じ感覚で水を使っていても、引っ越し先の料金設定が高いために、請求額が上がることがあります。

表：水道料金はこんなに違う！主要都市の料金比較
（家庭用・口径20mm・月20m³使用の場合）

都市名	1ヶ月あたりの水道料金（目安）
山形市	2,046円
東京都(23区)	3,256円
福岡市	4,202円
夕張市	6,841円
出典：日本水道協会「水道料金表」を基に作成

原因④：お住まいの自治体による「水道料金の値上げ」

個人の家庭の問題ではなく、お住まいの地域全体で水道料金が改定された可能性もあります。

後ほど詳しく解説しますが、現在、日本の多くの自治体では、老朽化した水道インフラを維持・更新するために、料金の値上げが避けられない状況になっています。

1分でできる！水漏れのセルフチェック方法【図解】

👉 このパートをまとめると！
家中の蛇口を閉め、水道メーターの「パイロット」という部品が回っていないか確認します。少しでも動いていれば、どこかで水漏れしています。

「もしかして水漏れかも？」と思ったら、業者を呼ぶ前に、ご自身で簡単に確認できる方法があります。このチェックで、原因をかなり絞り込むことができます。

Step1：家中の蛇口をすべて閉める

まず、キッチン、お風呂、洗面所、屋外など、家にあるすべての蛇口が固く閉まっていることを確認してください。

このとき、洗濯機や食器洗い機などが作動していないことも重要です。

Step2：水道メーターの場所を確認する

次に、水道メーターを探します。

• 戸建ての場合: 敷地内の地面にある、青や黒、鉄製の蓋のボックスの中にあることがほとんどです。
• マンション・アパートの場合: 玄関ドアの横にある、電気やガスのメーターと一緒になった「パイプスペース」と呼ばれる扉の中にあることが多いです。

Step3：メーターの「パイロット」を見る

メーターボックスの蓋を開けると、数字が並んだメーター盤面があります。その盤面にある、銀色の星形や円形の部品を探してください。これが「パイロット」です。

【判定】パイロットが少しでも回転していたら水漏れのサイン

家中で水を使っていないにもかかわらず、このパイロットが少しでもクルクルと回転していれば、残念ながら宅内のどこかで水漏れが発生している証拠です。

もしパイロットが全く動いていなければ、水漏れの可能性は低いと言えます。その場合は、先ほど挙げた原因②〜④の可能性を改めて考えてみましょう。

水漏れの可能性が高い場合の対処法【ケース別】

👉 このパートをまとめると！
水漏れの疑いがあれば、持ち家なら「指定給水装置工事事業者」へ、賃貸ならまず「大家さん・管理会社」へ連絡するのが鉄則です。

パイロットが回っていたら、次の行動に移りましょう。ただし、お住まいの状況によって連絡すべき相手が異なります。間違った対応は、余計なトラブルや出費に繋がる可能性があるので注意してください。

持ち家の場合：地域の「指定給水装置工事事業者」に連絡

ご自身で家を所有している場合は、お住まいの地域の「指定給水装置工事事業者」に連絡し、調査と修理を依頼します。

ここで重要なのが、「指定」の業者であるという点です。
これは、各自治体の水道局が、適切な工事ができると認定した事業者のこと。なぜこの「指定」が重要かというと、後ほど説明する料金の減免制度を申請する際に、この指定事業者による修理証明書が必須となるからです。

指定事業者のリストは、お住まいの自治体（市役所や水道局）のウェブサイトで必ず公開されていますので、そちらで確認してから連絡しましょう。

賃貸（マンション・アパート）の場合：まず大家さん・管理会社に連絡

賃貸物件にお住まいの場合は、ご自身で勝手に修理業者を呼ばず、必ず先に大家さんや管理会社に連絡してください。

水漏れの原因が、建物の壁の中にある配管など、共用部分や建物の構造に起因する場合、その修理責任と費用負担は貸主（大家さん）側にあります。
しかし、入居者の過失による設備の破損などの場合は、借主の責任となることもあります。

この責任の所在をはっきりさせるためにも、まずは管理者に状況を報告し、指示を仰ぐのが正しい手順です。

【重要】修理業者選びで失敗しないための鉄則

👉 このパートをまとめると！
「料金が安すぎる広告」は高額請求の罠である可能性が。消費者庁も警告しています。必ず複数の「指定事業者」から見積もりを取りましょう。

水漏れは一刻も早く直したい、と焦る気持ちはよく分かります。しかし、その心理につけ込む悪質な修理業者がいるのも事実です。大切な財産を守るため、以下の4つの鉄則を必ず守ってください。

鉄則①：「指定給水装置工事事業者」であることを確認する

何度もお伝えしますが、これが最も重要な防衛策です。価格の安さよりも、まず自治体のお墨付きがある「指定事業者」であることを確認しましょう。

鉄則②：「相見積もり」を必ず取る

緊急の場合でも、できれば2〜3社の指定事業者から見積もりを取り、料金や作業内容を比較検討することをお勧めします。1社だけの説明を鵜呑みにして、その場で契約するのは避けましょう。

鉄則③：極端に安い広告は疑う

「基本料金390円～」「出張費無料」といった、極端に安い価格をうたうインターネット広告には特に注意が必要です。

消費者庁が注意喚起しているように、 これは消費者の関心を引くための「おとり広告」であるケースが少なくありません。
現場に到着してから、「これは特殊な作業が必要」などと次々に追加料金を上乗せし、最終的に数十万円もの高額な請求をされる被害が多発しています。

鉄則④：修理前に作業内容と総額を確認する

信頼できる業者であれば、必ず作業前に「どのような工事が必要で、総額はいくらかかるのか」を明記した見積書を提示してくれます。口頭での説明だけでなく、必ず書面で内容と金額を確認し、納得した上で契約するようにしてください。

漏水による高額請求は戻ってくる？「減免制度」の正しい知識

👉 このパートをまとめると！
漏水で増えた水道料金の一部は、申請すれば「減免」される可能性があります。ただし全額ではなく、指定事業者による修理証明が必要です。

「漏水で高くなった水道代、少しでも返ってこないの？」という疑問は当然です。多くの自治体では、このようなケースに対する救済措置として「減免制度」を設けています。

減免制度とは？

これは、地中や床下など、発見が困難な場所からの漏水によって増えてしまった水道料金の一部を、申請に基づいて減額・免除する制度です。

ただし、重要なのは「全額」が戻ってくるわけではないという点です。
多くの自治体では、過去の平均的な使用量を超えた漏水量のうち、一部（例えば半分など）を減額するという方式をとっています。

申請の主な条件

この制度を利用するには、いくつかの条件があります。

• 「指定給水装置工事事業者」による修理とその証明書が必須です。
• 蛇口の閉め忘れや、明らかに故障に気づいていたのに放置した、といった利用者の過失による場合は対象外となることがほとんどです。

一般的な申請の流れ

1. お住まいの自治体の水道局から、減免申請書を入手します。
2. 修理を依頼した指定事業者に、修理内容を証明する欄を記入してもらいます。
3. 必要事項を記入し、水道局へ提出します。

(免責事項：減免制度の名称、減額の割合、申請の条件や手続きは、自治体によって大きく異なります。ご利用の際は、必ずお住まいの地域の水道局公式サイトをご確認いただくか、直接お問い合わせください。)

【専門家コラム】他人事じゃない。あなたの家の水道代がじわじわ上がる「本当の理由」

👉 このパートをまとめると！
全国の水道料金が値上がりする背景には、高度経済成長期に作られた水道管の一斉老朽化という、日本全体が抱える「インフラ危機」があります。

「最近、水道料金が値上がりした気がする…」と感じている方は、決して少なくないはずです。実は、それは個人の問題だけでなく、日本全体が抱える構造的な課題の表れなのです。

あなたの家の水道管も？日本の水道インフラの現実

国土交通省のデータによれば、日本の水道管の総延長は約74万km（地球約18.5周分）にも及びますが、そのうち実に22.1%が、法定耐用年数である40年を超えているのが現状です。

これらの水道管の多くは、1950年代から70年代にかけての高度経済成長期に、集中的に敷設されました。
そして今、それらが一斉に寿命を迎え、「更新のピーク」という深刻な事態を引き起こしているのです。

収入減とコスト増のダブルパンチ

水道管の更新には莫大な費用がかかります。
しかし、日本の水道事業は、節水機器の普及や人口減少によって、主な財源である料金収入が長期的に減り続けています。

そこへ、近年のエネルギー価格や資材費の高騰が追い打ちをかけ、多くの水道事業者は収入減とコスト増のダブルパンチに見舞われ、財政が危機的な状況に陥っているのです。

未来のための「料金正常化」と国の対策

この危機的状況に対応するため、国は2018年に水道法を改正し、経営基盤が弱い市町村の水道事業を統合・連携させる「広域連携」や、民間企業のノウハウを活用する「官民連携」を推進しています。

全国で相次ぐ料金の値上げは、こうした背景のもと、必要な更新費用を確保し、事業を維持していくための、ある意味で「料金の正常化」に向けた動きと言えます。

よくある質問（FAQ）

👉 このパートをまとめると！
水道代に関するよくある疑問に、専門家がQ&A形式で簡潔にお答えします。

Q1. 4人家族の水道代の平均はいくらですか？
A1. 総務省の家計調査（2022年）によれば、 4人世帯の1ヶ月あたりの上下水道料金は、全国平均で6,196円です。ただし、これはあくまで目安であり、地域やお住まいの状況によって変動します。

Q2. 漏水調査にはどれくらいの費用がかかりますか？
A2. 調査方法や業者によりますが、簡単な音聴調査で1万円〜、特殊な機材（トレーサーガス式など）を使うと数万円以上になることもあります。調査を依頼する際も、必ず事前に複数の指定事業者から見積もりを取りましょう。

Q3. トイレのレバーが元に戻りにくいのですが、これも水漏れの原因になりますか？
A3. はい、非常に多い原因の一つです。レバーの動きが悪いと、タンク内の水を止める弁が完全に閉まらず、便器内に常に少量の水が流れ続けている状態になります。この「チョロチョロ」という音は、高額請求のサインかもしれません。

Q4. スマートメーターとは何ですか？
A4. 通信機能を持ち、自動で水道使用量を計測・送信できる新しい水道メーターです。検針員が訪問する必要がなくなるだけでなく、30分単位などで使用量を細かく把握できるため、漏水の早期発見にも繋がる技術として、全国の自治体で導入が進められています。

まとめ：水道代の異常に気づいたら、まずはセルフチェックと専門家への相談を

👉 このパートをまとめると！
水道代の急な高騰は、家庭の問題と社会の問題が交差するサインです。まずは落ち着いてメーターを確認し、信頼できる専門家に相談しましょう。

この記事では、水道代が急に高くなったときの原因と対処法について、専門家の視点から解説してきました。最後に、重要なポイントを3つにまとめます。

1. まずはセルフチェック: 慌てずに、水道メーターのパイロットを確認しましょう。これが原因究明の第一歩です。
2. 業者は慎重に選ぶ: 修理が必要な場合は、必ずお住まいの自治体の「指定事業者」のリストから探し、相見積もりを取りましょう。
3. 背景を理解する: ご家庭の水の問題は、日本の水道インフラが抱える大きな課題と繋がっています。料金値上げの背景を知ることも、賢い消費者であるための一歩です。

突然の高額請求は、誰にとっても大きなストレスです。しかし、正しい知識を持って、一つひとつ冷静に対処すれば、必ず解決できます。